(主に)英語ポッドキャスト視聴日記

趣味で聴いているポッドキャストのまとめや感想など

【ポッドキャスト視聴日記】欧州エネルギー危機

 

こんにちは、satomiです。今日はMoney Talksの、欧州のエネルギー危機をテーマにした回を視聴しました。

 

Money Talksは英エコノミスト誌がやっている経済解説番組で、週1回のペースて話題のひとつの経済トピックについて深掘りします。取り上げられるテーマがどれも興味深く、素人の自分にとっても分かりやすので、最近よく聴いている番組のひとつです。

 

今回のタイトルは'Running on empty'。ロシアの ウクライナ侵攻をきっかけにロシアからガスが届かなくなりエネルギー価格が高騰し、危機の冬を迎えつつある欧州の話でした。

 

番組の冒頭では2011年の東日本大震災の時にエコノミスト誌の日本支局長だった方が、震災直後の日本の様子を話していました。福島原発事故により提供可能な電力量が一気に3割も下がったが、日本国民は素晴らしい団結で「節電('setsuden'と言っていました)」によって危機を切り抜けたと語っていました。11年も経ってだいぶ記憶が薄れていますが、あの時は東北を中心に本当に大変でしたね。

 

そこから「この冬の欧州もあの時の日本のようになるのか?だとしたらどうやって切り抜けるか?」というテーマのもと、さまざまな専門家の意見を交えて考察していました。

 

欧州のエネルギー価格かどれぐらい上がっているかというと、電気はウクライナ戦争前にMwh(メガワット時)あたり50ユーロだったものが11月は700ユーロと14倍に跳ね上がり、ガスも30ユーロから230ユーロに高騰しているとのこと。

 

ガスだけでなく電力価格も高騰しているのは発電のためにガスを使うため、ガスの価格が上がると電力価格も併せて上昇してしまうからです。また、フランスやドイツの原発が出力低下や稼働停止していたり、河川やダムの水位低下により水力発電が使用不可になっていることで、よりコストがかかるガス発電に頼らざるを得ない状況のようです。

 

電力の価格はmarginal pricing model (限界価格モデル)で決まるそうです。つまり発電方式に関わらずどの発電事業者も同じ電力市場に入札し、コストの低い電力から応札されます。電力需要が上がり、発電コストの低い電力が売り切れると、より単価の高いガスが購入されます。でもその際、コストのより低い原子力などもガスと同じ価格で応札されるため、低コストで発電できる事業者は大きな利益を得ることができます。(再エネなどは事前に先物市場(forward market)にて固定価格で売り切ってしまうため、それほど儲かっていないという意見もありましたが)

 

このようなエネルギー高騰に対して政府が取れる対策は1) エネルギー価格を抑制する 2) エネルギー価格はそのままで、価格高騰の影響を強く受ける層(低所得者など)を現金給付などで援助する、の2つです。

 

いずれの場合も財源をどのように確保するかについては1)エネルギー企業に対してwindfall tax(超過利潤税)を課す、2)税金で賄う、3)光熱費に上乗せする の3種類が挙げられていました。欧州委員会委員長のフォン・デア・ライエン氏は大きな利益を上げている電力会社から超過利潤税を徴収し、それをEU加盟国に配布して弱者支援に充てるべきと話していましたが、電力料金の変動を織り込んで事業か成り立っている会社もあるので超過利潤税と言ってもそう簡単ではないという意見もありました。

 

また、エネルギー価格を不自然に抑制すると、消費者に正しいシグナルが届かないため(価格が安いと消費者がエネルギーをいくらでも使ってもいいと思ってしまい、節電が進まない)価格規制は望ましくないという意見もありました。

 

そのため価格規制は行わず、必要な人たちに現金給付のような支援をすることが望ましいが、それには時間がかかり、本当に困っている人に確実に届けることも簡単ではないそうです。現行の福祉制度下の「低所得者」だけに給付をしても、給付対象から漏れてしまう中所得者層の方が実は困っていることもあるそうです。日本の育児支援に状況が似ていますね。

 

また、所得支援をしたために家庭の電力需要が減らないと、供給量は変わらないので企業や他国が高いコストを支払わざるを得ず、割を食ってしまう可能性もあります。企業のコストが上がると賃金カットや失業に繋がり、被害は結局、家庭に戻ってきてしまいます。バランスの取れた制度設計って本当に難しそうですね。

 

欧州各国は冬が来る前に相当量のガスを購入し、備蓄しているようですが、今冬の厳しさによっては2月頃に備蓄が途絶えてしまう可能性もあるそうです。そうなったら本当に福島原発事故後の日本になってしまう、でも欧州のほうが日本より寒いからどうしょう、、、と言った切羽詰まったトーンで番組は締めくくりを迎えました。欧州のエネルギー問題、今後も要注目です。